工芸の世界:工芸大国・日本を知るための手がかりガイドブック

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日本では「手」という言葉が大きな意味を持つ

元来我国を「手の国」と呼んでもよいくらいだと思います。国民の手の器用さは誰も気附くところであります。手という文字をどんなに沢山用いているかをみてもよく分かります。「上手」とか「下手」とかいう言葉は、直ちに手の技を語ります。

「手堅い」とか「手波がよい」とか、「手柄を立てる」とか、「手本にする」とか皆手にちなんだ言い方であります。「手腕」があるといえば、力量のある意味であります。それ故「腕利」とか「腕揃」などという言葉も現れてきます。それに日本語では、「読み手。「書き手」「利き手」「騎り手」等の如く、ほとんど凡ての動詞に「手」の字を添えて、人の働きを示しますから、手に因む文字は大変な数に上ります。

そもそも手が機械と異る点は、それがいつも直接に心と繋がれていることであります。機械には心がありません。これが手仕事に不思議な働きを起させる所以だと思います。

手はただ動くのではなく、いつも奥に心が控えていて、これがものを創らせたり、働きに悦びを与えたり、また道徳を守らせたりするのであります。そうしてこれこそは品物に美しい性質を与える原因であると思われます。それ故手仕事は一面に心の仕事だと申してもよいでありましょう。手より更に神秘な機械があるでありましょうか。 一国にとってなぜ手に依る仕事が大切な意味を持ち来すかの理由を、誰もよく省みねばなりません。

【引用】柳宗悦(著)(1985)「手仕事の日本」岩波書店